『Artist Voice II: 有元利夫 うたのうまれるところ』の展覧会が慶應義塾大学アート・スペース(KUAS)にて2022年2月14日(月)〜4月22日(金)開催されました。
慶應義塾大学アート・センター
今回のカタログリーフレット
『Artist Voice II: 有元利夫 うたのうまれるところ』は2月14日(月)〜4月22日(金)
と比較的長い期間無料で『有元利夫』のスケッチをひっそりと公開していました。
今回の展覧会のみるべきポイント
・『有元利夫』の絵画ではなく源泉となるイメージスケッチを展示。
・スケッチなので頭にある抽象的なイメージを具現化したもの。
・自由な発想でラフに描いたもの。
音楽の画家
『有元利夫』は1946年生まれの岡山県津山市出身の画家です。絵画の題材はイタリアのフレスコ画の影響が大きく、イタリア・ルネッサンス期のジョット、ピエロ・デラ・フランチェスカや、日本の古仏や平家納経などイタリアと日本の文化の融合が絵のスタイルに表れています。38歳の若さで亡くなったことから『早世の天才画家』とも呼ばれています。
絵画の材料と画風
岩絵具、箔、金泥などを用いた独特の油彩技法と、表情のない女神の肖像と静謐で素朴な画情を持つ作風は日本の洋画界に新しい領域が期待されました。キャンバスに剝落を施したり額縁に虫食いの穴を空けたり『風化』をイメージさせる絵画を追求しました。
『見ているうちにどこからともなくチェンバロの調べが聞こえてくるような、そこに音楽が漂っているような画面』の制作を追求し『室内楽』『厳格なカノン』『ポリフォニー』と言った音楽をイメージしたものを多く残し、日本画に使う岩絵具で乾いた絵肌と金などを使い静寂な空間を表現しています。
木炭、クレヨン、水彩画、鉛筆、ペンなどの素描がたくさん展示されています。
素描の魅力
最終的には絵画を完成させますが、素描は完成した絵画とは異なり自由な発想でイメージを膨らませ、思いのままに描き、有元の内面の世界を表現しています。
ここでは作品としての素描とは異なる心象風景のスケッチのように感じられ、作品よりもこれらの素描、スケッチは画家の本質の部分なのかもしれません。
ルネッサンスに活躍した天才芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロの素描を見るとわかりますが、有元もルネッサンスの素描による線と量感の表現の重要性が感じられます。
有元利夫の人物像
後に日本油彩絵画のステイタスとも言える『安井賞』。1978年、第21回安井賞展に「花降る日」「古典」をこの年のみの特別賞となった安井賞選考委員会賞を受賞。1981年「室内楽」で第24回安井賞を受賞した有元も若い頃には大学受験では何度も苦労をし、1969年東京藝術大学美術学部デザイン科に入学し、卒業後『電通』に勤務して1978年から東京藝術大学の非常勤講師の教員の仕事の傍ら絵画の道を進みました。
最後に
38歳と言うあまりにも若くして亡くなった『有元利夫』。限られた時間の中で油彩画以外にも塑像、木彫、リトグラフ、銅版画など勢力的に制作活動してきました。
昨年の2021年『有元利夫』の1980年~1983年に制作されたリトグラフのオリジナル版画6作品の偽作が見つかりました。警視庁や業界団体は今後、販売した可能性もあるとみて流通経路を調べています。
身を削る様に作り上げた作品に対してこのようなニュースを聞くと非常に残念でなりません。
『Artist Voice II: 有元利夫 うたのうまれるところ』慶應義塾大学アート・スペース(KUAS)
会期:2022年2月14日(月)〜4月22日(金)
休館日:土日祝・休館
場所:慶應義塾大学アート・スペース (三田キャンパス 南別館1階)
入場料:無料
住所:〒108-8345東京都港区三田2-15-45
TEL:03-5427-1621
下記サイトでオリジナル商品を販売しています。
よろしくお願いいたします。