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浜田知明 モノトーンのシニカルな世界

『茅ケ崎市美術館』にて『浜田知明  アイロニーとユーモア』展が2021年12月11日から(土)2022年2月6日(日)まで開催されました。

早めに仕事が終わり茅ケ崎を散策し『茅ケ崎市美術館』に向かいました。

『浜田知明  アイロニーとユーモア』展リーフレット

■今回の展覧会のみるべきポイント

・『浜田知明』の代表的な銅版画とくに今回は色彩のあるものを展示。

・個人所有の寄贈された銅版画。

・彫刻作品を観ることが出来る

茅ケ崎市立図書館本館と茅ケ崎市美術館

目的地の『茅ケ崎市美術館』は高砂通りの『高砂緑地』の敷地内にあるらしい。

一度も訪れたことがなかったので場所が分からない。

『高砂緑地』手前には『カトリック茅ケ崎教会』が右手に見える。

左手側には『茅ケ崎市立図書館本館』が正面に大きなパーゴラがありよい感じです。

茅ヶ崎市立図書館

https://www.lib.chigasaki.kanagawa.jp/TOSHOW/html/access.html

ここが『高砂緑地』の入口。更に奥に『茅ケ崎市美術館』があります。

公園内の道を直進して緩やかな坂を登ると『茅ケ崎市美術館』

茅ヶ崎市美術館

 

社会批判の中にユーモア感覚が冴える銅版画

『浜田知明』1917(大正6)年~ 2018(平成30)年は戦後日本を代表する版画家、彫刻家です。銅版画メゾチントの浜田陽三、エッチングの駒井哲郎、木版画の棟方志功と並び戦後を代表する版画家のひとりといわれております。

代表作は自身の過酷な戦争体験をもとにした『初年兵哀歌』シリーズ。

彼の作品の特徴は社会や人間そして自分自身さえも痛烈に批判しながらもユーモアを交えた表現。

2017年12月に100歳を迎えましたが、翌年の2018年7月17日に亡くなりました。茅ケ崎市美術館には個人のコレクター作品が寄贈されて保管されています。

 

銅版画の世界と画風

アクアチント、エッチングなどを銅版画の手法を駆使した深い黒。モノクロームの階調の美しさとオリジナリティ溢れるイメージ。緻密なディテール表現による独特の世界観による版画です。

一連の銅版画には現代社会にも通じる闇の底の深い世界や寂寥感が感じられます。

油彩画による色彩絵画の世界から背を向け、シンプルな白と黒の世界を探究しました。

『少年兵哀歌(歩哨)』『ボタン(A)』『いらいら(A)』と言った戦争の不条理、核の脅威や狂気、社会批判、老いなど『人間性の愚かさ』などをテーマとした作品を数多く残しています。

リーフレットより

モノトーンの魅力

銅版画の線による入念な細部の表現とアクアチントの黒の階調は非常に緻密に仕上げられています。それらは浜田の内面世界を表現しています。

ここでの一連の作品群のいくつかは戦地の中国大陸の荒涼とした水も木々もない風景を題材にしています。

彼が銅版画に行き着いた最初の傑作は『初年兵哀歌』のシリーズと言われています。

わたしが最初に浜田の作品に触れ衝撃を受けた『少年兵哀歌(歩哨)』は、浜田の自画像ともいえる作品です。

戦地での軍隊生活のなかで歩哨に立つ時間、両手で銃口を喉元に当てながら引き金は片足で引いて、自らの生命を絶つ寸前の姿。

骸骨のような穴の開いた目から一筋の涙が流れる初年兵の姿を描いた実物の版画はやはり凄かった。

いままでは画集や映像でしか見たことがなかった浜田の作品を近距離で堪能。

版画の細かい表情まで確認することが出来ました。

溝を掘った線による人物の立体表現は細かく緻密。闇の階調そして空間の奥行きなど『浜口陽三』の銅版画とはまた異なる『黒の陰影』。

銅版画の空間の広がりと立体作品

タイトル『絞首台』『風景』など銅版画に描かれている中国大地はシュールレアリズムの『サルバドール・ダリ』の絵画のような荒涼とした大地をも思わせ、その構図は『ポール・デルヴォ―』の絵画のような空と雲による大空間。不思議な風景の中になにやら動物のような肉片のようなものを。自己の老いを深く見つめた彫刻作品では『杖をつく老人』で自らの老いのていく姿を直視して作品としました。

最後に

戦争や現代社会の中で人間性を無くしてしまうある種の不条理、悲愴感、虚無、無感情と言った時代を通しての『人間の愚かさ』をテーマにユーモアまじえたシニカルな表現で魅了する『浜田知明』。

100年と言う一世紀を生き抜き、最後まで年齢を感じさせない制作姿勢は作品に対しての執念なのか皮肉を込めたものなのか彼の人生を知る大きな機会となりました。

『浜田知明 アイロニーとユーモア』

会期:2021年12月11日(土)〜2022年2月6日(日)
休館日:月曜日
場所:茅ケ崎市美術館
入場料:一般700円(600円) 大学生500円(400円) 

市内在住65歳以上350円(250円)

浜田知明 アイロニーとユーモア | 茅ヶ崎市美術館
〒253-0053
神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1-4-45(市立図書館隣り・高砂緑地内)
TEL 0467-88-1177

茅ヶ崎市美術館

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