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すべてのひとを魅了するスタイル『ルーシー・リー』

陶芸作家『ルーシー・リー』。いまさらなにを書くのかと言われるくらい著名でインテリア好きの若い女性にも人気の陶芸作家です。日本のファッションデザイナー『三宅一生』も注目していた彼女の陶芸作品。わたしが敬愛する陶芸家『ハンス・コパー』はイギリスで『ルーシー・リー』共同制作をしていた時期もありました。

『ルーシー・リー』はなぜ人々を魅了するのか考えてみました。

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『没後20年 ルーシー・リー展』リーフレットより

千葉市美術館 2015/7/7-8/30

 

陶芸家ルーシー・リー

20世紀を代表するイギリスの最も偉大な陶芸家『バーナード・リーチ』を追従する陶芸家と言えば『ルーシー・リー』と『ハンス・コパー』の名前の『国立新美術館』です。その後、2015年再度千葉に出向きこの展覧会をみました。ここには彼女の出身校のウィーン工業美術学校からオーストリア応用美術・現代美術館に寄贈されたものです。

 

ルーシー・リーは、ユダヤ系の医師の娘としてウィーンに生まれました。戦時中オーストリアを併合したナチス・ドイツ。彼女はユダヤ人だったためにナチスの迫害を逃れながらイギリスへ亡命。かの地で作陶生活を送ることになります。

 

彼女の祖国への思いは複雑で存命中はウィーンでの個展の開催は決して許しませんでした。ですから後のスタイルの原点ともいえるウィーンでの作品は大変貴重なものと言えます。

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千葉市美術館リーフレットより

青釉鉢 1926年 オーストリア応用美術・現代美術館蔵
 

 

現代の多くの陶芸家に影響を与えたスタイル

 彼女の作品の特徴は『釉薬』。美しく繊細な芸術的なフォルムに研究しつくされた独自の釉薬調合。その造形は、底の接地面が小さく、繊細で極限まで薄い轆轤(ろくろ)で成形したかたちとそれにピッタリと合う釉薬の加飾技法によるものです。 

その特徴は

・電気窯による現代的でその軽く薄い作風はスタイリッシュで緊張感がある造形

・厚みは薄く上部は流麗な曲面で広がり底に向かって絞り込まれた高台は厚く小さい

・象嵌や掻き落しによる線描やセルリアンブルー、ピンク、黄色と言った柔らかな釉薬

・緻密な成分計量に基づく理論的な釉薬の調合それによる独特の繊細な質感 

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ピンク線文鉢 1970年代後半 

 

 

ハンス・コパーによる決定的な言葉

イギリスに渡りバナード・リーチからルーシー・リーはかなりの批判的な評価を受けました。目指すものが異なるのに批判するのはどうかとは思いますが。彼女の陶芸スタイルがリーチ好みのものに変わっていく時に陶芸家、彫刻家でもあるハンス・コパーから『あなたはあなたの陶芸をすべきだ。』とルーシー・リーに言ったとか。

この言葉をきっかけに『バーナード・リーチ』の呪縛から解放されて、彼女は自分の陶芸による華麗なルーシー・リーの作品世界を追求することが出来たと思われます。

 過酷な生活の中でコパーもまた、ロンドンで同じ境遇の陶芸家が出会い制作したカップ&ソーサーは、造形に強いハンスが轆轤(ろくろ)を釉薬が得意なルーシーは絵付けを行って共同制作をしました。

 

 

三宅一生を魅了した陶芸家

三宅一生は、ロンドンの旅の途中に一冊の本『Lucie Rie』John Houston著に出会い、この陶芸家に魅了されました。その器の美しさに惚れ込み1984年ルーシー・リーのイギリスの工房を見つけ出し本人に直接対面したそうです。

5年後の1989年草月会館、大阪市立東洋陶磁美術館にて『ルーシー・リー展』を開催し、彼女の名前は日本に紹介され、陶芸作家としてその名が広まっていきます。

 

三宅一生はロンドンを訪れる度に工房を訪問し、彼女から贈られた陶器のボタンとその陶器の成形用の鋳型を今も大切に持っているそうです。

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千葉市美術館リーフレットより

『陶製ボタン』1940年代 個人蔵 Estate of the artist  撮影:大屋孝雄

 

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