6月に東京現代美術館の企画展示『マーク・マンダース —マーク・マンダースの不在』展に出掛けました。楽しみにしていたこの展覧会。
新たに東京現代美術館の所蔵作品を紹介する「MOTコレクション」特別展示『マーク・マンダース:保管と展示』(7月17日~10月17日)が開催されています。
《2つの動かない東部》東京現代美術館蔵
マンダースの屋外彫刻 金沢市の金沢21世紀美術館でも屋外の中庭に展示されている。
マーク・マンダースは1968年生まれのオランダの現代美術の作家です。
2013年のヴェネチア・ビエンナーレをはじめ、国際的なアートシーンで高い評価を得ている現代美術作家で日本国内の美術館での初の個展となります。
30年の作家活動を通して取り組んでいるテーマが『建物としての自画像』。
マンダース自身の人物・自画像を『建物』としての枠を用いて構築するというもの。
ちょっと抽象的でわかりづらいですね。
と言うことで作家インタビューはこちら
今回の展覧会の私的ポイントは おおきく4つ
・散策性のある象徴的な展示空間もひとつの作品
・独創的なヴィジョンによる彫像表現
・静寂と痕跡が語る不穏な内面性
・作家の複雑な感情表現
ざっくりまとめると。
美術館の個々の彼の作品を配置した展示空間(建物)もまたひとつの作品。
再構築して、その作家の人物像を表現する的なことでしょうか。
感情を揺さぶる独自の内面性
作品はマンダース自身の複雑な内面や観る側の感情を揺さぶる象徴的な表現がいくつかあります。わたしがこれら作品に強く惹かれてしまう理由はなんなのだろうか。
展示空間を歩いていて、これは彼の内にあるめくるめく内面の世界を我々が覗いてまわるような感覚です。ここは時間が停止したその痕跡であり作品を制作した後の作業場のように感じます。
《4つの黄色い縦のコンポジション》 2017-2019
《乾いた土の頭部》2015-16 作家蔵
《黄色い縦のコンポジション》
家具と人体によるこころの部屋
インテリアの家具と人体を融合させてのインスタレーション面白いですね。
家具を置くことで室内を想起させ且つ装置として作品表現する。
作品は象徴的でなにかを暗示させこころをざわつかせる造形がいくつかあります。
緊張感と不可思議な気持ちにさせます。
《マインド・スタディ》2010-11 ボンネファンテン美術館蔵
《椅子の上の乾いた像》2011-15 東京都現代美術館蔵
2013年のヴェネツィア・ビエンナーレでも出品された代表作
《リビングルームの光景》
ベルトで縛る理由
一連の作品の一部に共通しているものがあります。動物の彫像をテーブルや壁、動物同士をベルトで縛る行為。
なにか身動きが取れない状況や感情がそこには存在するのでしょうか。それとも全く異なる意味があるのでしょうか。
《狐/鼠/ベルト(建物としてのセルフ・ポートレイトからの断片)》1992-1993
鼠は狐の腹に飲み込まれてしまえば見えなくなる存在にもかかわらず、自分のベルトで鼠を狐に括りつけてみたところ、その行為によって「ユニット」という第3の言葉が作品の中に深く沈んでいたことに気づいた。
マンダースは、「後先がなければ、定型化されたことも信じられない作品を生み出すもの」と述べています。
《舞台のアンドロイド(88%に縮小)》2002-2014
《記録に残る研究課題》
ディテール表現が素晴らしい
マンダースの好きな理由はこのディテール表現。ヒビ割れや廃棄された像とカンボジアのアンコールワットの遺跡のような廃墟の空気感。そしていずれは朽ち果てる様子をかたちにしています。
そして木材や金属が塑像に暴力的に食い込んだり、断片化された頭像を木材に挟み込んだりしています。不可思議で不安感を煽る
一見すると油粘土のように見えるが、実際は鋳造された青銅に着色したもの。
エポキシ樹脂に粘土の様に彩色したものもあります。
ヒビ割れや粘土の質感の表現力が凄い!!
『凍結した瞬間』と作家が呼ぶその世界を感じ取ることができなくても、きっとこの作品群は観る人々によって感じ方はさまざまでよいと思いました。
制作風景を動画で。
Mark Manders 'Tilted Head' in progress YouTubeより
東京現代美術館HP『マーク・マンダース —マーク・マンダースの不在』展より
東京現代美術館では現在もマンダース作品の展示を継続しています。
所蔵作品を紹介する「MOTコレクション」の一部として行われています。
特別展示「マーク・マンダース:保管と展示」(7月17日~10月17日)。
MOTコレクション | 展覧会 | 東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO
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