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奥州盛岡は建築天国

岩手県盛岡市には重要文化財指定の建物やモダンな近代建築物がいくつかあります。代表的なものは『辰野金吾』と『葛西萬司』(辰野・葛西建築設計事務所)が設計した『岩手銀行赤レンガ館』。そして『佐藤功一』が設計した『岩手県公会堂』などがそれにあたります。当時のモダン建築『岩手県庁舎』、『三田商店本社』などを駆け足で建築探訪しました。

 

辰野金吾・葛西萬司の歴史的な建造物

『岩手銀行赤レンガ館』の設計者は東京駅を設計した『辰野金吾』。辰野金吾が設計に携わった建築として東北地方に唯一残された建物。正確には『葛西萬司』も携わり、辰野・葛西建築設計事務所に設計による建物です。

1994(平成6)年より現役の銀行建築として初めて国の登録有形文化財として認定されています。

岩手銀行赤レンガ館について | 岩手銀行赤レンガ館

『岩手銀行赤レンガ館』は、1911(明治44)年に盛岡銀行の本店行舎として建てられました。東南角に八角形の塔、南面西には四角形の塔を設置して、東面北端側には切妻屋根が登場しています。

1936(昭和11)年に岩手殖産銀行(のち銀行名を岩手銀行に変更)がこの建物を譲り受けて本店として利用されました。

その後、1983(昭和58)年に岩手銀行新社屋完成に伴い『中ノ橋支店』となりました。

よく見ると八角形の塔屋が『東京駅丸の内駅舎』と似ていますね。

『岩手銀行赤レンガ館』の石材とレンガの併用は『東京駅丸の内駅舎』の石材とタイルとの共通点も多い。

『東京駅丸の内駅舎』全景

2012年までは銀行として使用され、2016年には多目的ホールおよび創建当時の館内を展示する施設となりました。

この階段状の立体的な外壁はタイル施工にピッタリです。

そして『東京駅丸の内駅舎』開口部周りに注目。

外壁は赤レンガに花崗岩の帯を回す。『東京駅丸の内駅舎』と同様に屋上にドームを載せて赤レンガのファサードに石材でアクセントを加える点などに辰野の建築スタイルですね。

敢えて当時のままの状態を継続できるように工事の手は余り加えられてはいないようです

『岩手銀行赤レンガ館』のタイルの質感は『東京駅の丸の内駅舎』のタイルの質感と似ています。

『東京駅丸の内駅舎』のタイルディテール

目地は『覆輪目地』と言う職人技の意匠目地で、目地の断面がカマボコ状になっています。立体的な丸みを帯びている凸面状なのです。

 

www.iwagin-akarengakan.jp

感動のスクラッチタイル建造物『岩手県公会堂』

次に『岩手県公会堂』を訪問。

『岩手県公会堂』は1923(大正12)年、当時の皇太子 昭和天皇陛下のご成婚を記念し岩手県議会で公会堂の建設が発議され建設されました。

創建時の公会堂は、県会議事堂・大ホール・西洋料理店・皇族方等の宿泊所と4つの用途を兼ね備えた施設だったようです。2006(平成18)年より登録有形文化財として認定されています。

設計者は、早稲田大学大隈記念講堂(1927年)日比谷公会堂(1929年)などで有名な『佐藤功一』。日比谷公会堂と非常によく似た外観をしています。

すべての建物に共通しているのは外壁に『スクラッチタイル』を使用していること。

『早稲田大学大隈記念講堂』

外壁はスクラッチタイルを使用していて塔屋があります。

2年先に完成した岩手県公会堂は地上6階建てに更に4階建ての塔を乗せた当時の高層建築。

『東京大学本郷キャンパス安田講堂』

東京大学の安田講堂(1925年)もこれに該当しますね。

スクラッチタイル張り外装や塔屋の姿は『早稲田大学大隈記念講堂』『北海道大学大学院農学研究院・大学院農学院・農学部』など当時の大学、公共施設を代表する建物に多く取り入れられました。

いずれも近代コンクリート建築の先駆けのような存在でした。

北海道大学 農学部/大学院農学院/大学院農学研究院

『岩手県公会堂』のスクラッチタイル

『早稲田大学大隈記念講堂』のスクラッチタイル

『岩手県公会堂』の外壁には『早稲田大学大隈記念講堂』とほぼ同じ色合いの『スクラッチタイル』を使用しています。溝の深さと面状の荒さ『わらび』と言われる

 

当時のスクラッチタイルはすべて手づくり。

釘を何本も差した木板を平たい生土の板の表面に滑らせて、釘で引掻いた跡の凹凸のある筋でタイル面状の表情を付けています。

ちなみに早稲田大学大隈記念講堂(1927年)外壁の『スクラッチタイル』は一部復原されて往時の姿を再現しています。

この施設は大きな補修、改築を経ていないため、県議会議事堂当時の装飾・施設などが残されています。

当時の建物に共通する曲線のアプローチによる車寄せ空間が好きです。

玄関前のこの空間はとてもよい。

開口部の見上げと立体的な階段状の柱型も今の建築物では決して見られない贅沢さ。

このディテール表現の複雑さには感心。

8弾の階段状の柱型のディテール。ここまでやるとは。

壁の中心のやきもの製の『テラコッタ』がそのまま残っています。

この緻密なレリーフ装飾が素晴らしいですね。陰影が綺麗に出ています。

こうしてみると『テラコッタ』は結構なボリューム感と厚みがありますね。

こちらは早稲田大隈記念講堂の塔屋部分

この様なスタイルは当時のトレンドでもあり『佐藤功一』建築の特徴。

早稲田大学大隈講堂回廊部分

コチラの『テラコッタ』は潤沢な予算で格調高くスケールも大きい。

 

『岩手県公会堂』東側玄関の開口部周りの額縁にも『テラコッタ』が使用されています。

これはなんと豪華なつくりに。当時の公共建築の意気込みを感じます。

iwate-kokaido.jp

まだまだあるモダン建築

その他には『岩手県公会堂』の近くには『三田商店本社』『岩手県庁』などがあります。

『三田商店本社』

株式会社三田商店は、盛岡市に本社を置く建築資材及びエネルギーの商社。竣工は1968年でこの建物を設計したのは『新宿の京王デパート』を設計した『圓堂政嘉』。

1F低層部のコンクリートのアーチ柱が特徴です。なんでも階段室が素晴らしいらしい。

エンドウ・アソシエイツHPより

三田商店本社 | 株式会社エンドウ・アソシエイツ

株式会社 三田商店

京王百貨店のあゆみ|京王百貨店

 

『岩手県庁』(1965年)

4月22日の定例記者会見で、築57年で老朽化が進む県庁について、本年度中にも建て替え準備に着手する方針を示した『岩手県庁』。

設計は山下設計により1965年竣工。地上12Fの盛岡市内のランドマーク的な建物です。

今見てもモダンな建築で妻壁の構造体が意匠になっています。

施設案内 岩手県庁|盛岡市公式ホームページ

岩手県 - 県庁舎について

他にも名建築がいくつかあり、ぜひ訪問してくださいね。

 

 

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