建築家 前川國男とは
ル・コルビュジエ、アントニン・レーモンドの元で建築を学び、近代モダニズム建築の旗手として、第二次世界大戦後の日本建築界をリードしました。1960年代半ば以降、前川は産業社会とそれを支える合理主義のいくつかの側面にきわめて批判的でした。丹下健三、木村俊彦は前川事務所の出身。
前川國男の建築 代表作のポイント
東京都美術館
東京都美術館は、日本初の公立美術館であり名画の企画展示はもちろんのこと日展、二科展などの公募展覧会の会場として国民のために使われ、日本の芸術の先端と言われた美術館です。
美しい建物全景
美術館機能の1/2を地下に設け『上野恩賜公園』の自然景観と調和させるという、当時高く評価された前川プランを改修工事は踏襲しています。
中央棟2階の奥に食堂を新設し『上野恩賜公園』の園路再構築に伴う動線計画といった空間的な変更、バリアフリー、省エネの対策など様々な視点で検討されました。東京都が掲げた方針は『前川建築の保存』です。
上野恩賜公園からの美術館の配置による視覚的な誘導
ピロティのグラウンドラインと2Fのグラウンドラインの中間に踊り場を設けた
立体的な空間設計。
公園からもう一箇所の出入口付近。全景はこれ以外にもいくつかの見どころがあります。
建物の建築素材
外装を覆うのは『打ち込みブリック』(一部レンガ)を外装壁に採用しています。当時タイルをコンクリートに流し込み一体化させて、耐久性を高めることを考えています。それによって構造的にも強く、豊かな温かみのある空間を実現できました。その他タイルを外装床及び内装壁にも多く使用しています。
細部ディテールのこだわり
前川が希望したタイルは開口部や巾木の部分の納まりなど細部の素材の使い方が美しく納められています。床から立ち上がりの入隅部分をタイルを使用して床と壁の一体感、そして曲面により清掃性がよく掃除もしやすい納まりになっています。
美しい地下空間のインテリア設計
地下に設けられている中央広場:エスプラナード正面から入るエントランスロビー。そこから各展示室へつながる通路空間は、天井の低さを感じさせず広さを感じさせるため2連のアーチ状の緩やかな天井形状になっています。
エントランスの正面にはミュージアムショップが設置され、各展示室への動線計画は軽やかで且つ開放的。前川建築の特徴が十分に出ています。
2連のアーチ天井の構造は柱で支えられて天井のセンター部分に照明を設置。
柱の配置と家具の配置は整然としていて気持ちよい。前川國男の設計した椅子の座面のカバーの色彩の使い方にもセンスが感じられます。
建物の特徴的な内部設計
内部空間には個性的で特徴的な設計箇所がいくつかあります。公募展覧会を行う展示室前の天井の高い開放的な空間や建物の構造としての役目を果たす階段をフロア中央に配置。個性的でデザイン性の高い空間を実現できました。
採光を十分に考えた企画展示室の前室。前川の設計した椅子が置いてあり、ゆっくりと寛げるスペース。
佐藤慶太郎記念 アートラウンジのこだわり
公園の緑を見ながらくつろげるフィン・ユールなどをはじめ北欧デザインの椅子がたくさんあります。実際に座ってゆったりとした時間を過ごせる休憩スペースがあります。
ここは展覧会などの情報を入手できる空間で、他館の展覧会チラシ、美術情報の収集のための検索端末も設置されています。美術館スタッフが常駐し、美術情報などの質問の受け付けを行っています。
広く開放的なアートラウンジ
外装床に用いられたタイルは外部空間と同様の湿式タイルが施工されています。
テーブルは前川國男建築設計事務所にて設計し天童木工で制作した『おむすびテーブル』。イージーチェアはイブ・コフォード・ラーセンのデザインの椅子である『IL-10』
魅力ある工業製品
前川國男のデザイン設計による工業製品や北欧の名作椅子が置かれています。
このペンダント照明は北欧の照明デザイナーのポール・へニングセンの PHシリーズを思わせますね。美しい銅製の照明です。光りのグラデーションが美しいですね。
フィン・ユールのカクテルテーブル『FJ-160CT』と1人掛けのイージーチェア『FJ-01』
前川國男設計の2タイプの椅子。当時流行のスタイルの北欧風の椅子は座りやすく疲れない。シートはカラフルな布製。各スペースには赤・緑・青・黄などのニッチ壁を設置して来訪者にどのフロア階なのかを認知させています。
■アートな本と出会い北欧の名作椅子を体験できます。
https://www.tobikan.jp/media/pdf/h28/guide_artlounge.pdf
日本のモダニズム建築を牽引した建築家・前川國男が設計した東京都美術館を『とびらプロジェクト』で活動するアート・コミュニケータ(とびラー)と一緒に散策できます。
ここでは展覧会だけでなく美術館の建物そのものを知ることができる建築ツアー。
定期的に実施されています。
神奈川県立図書館
やきものを建物の外装材として多用した建築家です。神奈川県立図書館は東京都美術館と同様にやきものを外装の壁に使用しました。隣接する神奈川県立音楽堂とともに前川國男の設計による戦後の日本建築の代表作と言われています。
陶器製の穴あきブロック
図書館の外壁に手作業による陶器製の穴あきブロックを採用しています。新たに部材を製造して図書館外壁の改修工事を行いました。1954年に開館したこの建物は、戦後のモダニズム建築を牽引した前川國男氏の設計した建物です。
四季、日照時間によって大きく変化する太陽の光を読書に適した量で取り入れることが出来る様に工夫されています。
当時のセラミックによる穴あきブロックを新たに製造し改修工事を行いました。
白い目地を荒めに積層するようなイメージで施工
建物の外装パーツ
外部空間には個性的で特徴的な設計箇所がいくつかあります。やきもののスクリーンを設置して自然光を緩やかに部屋で受け止めています。特異性のあるデザイン性の高い建物が実現できました。
桝目模様は枠型ホローブリックと呼ばれています。せっ器質の焼き物で中空形状を制作し、構成されています。
特注有孔ブロック 310×150×120(mm)
穴に施釉再生したブロックの穴の内側には手作業での施釉処理がされています。
内観のこだわり
外部の緑を見ながら図書館で書籍を読む。そしてくつろげる空間です。現在は一部改修と増築などでやや様相はことなっているようですね。
外部から見たスクリーン
内部から見たスクリーン。近代建築の巨匠、ル・コルビュジエに日本人として初めて学び、戦後モダニズム建築の先駆者ならではの建築空間。
光りの入り方が美しいですね。
左手側には前川建築の特徴のひとつピロティとアールを描くコンクリート製の軒
前方正面は『神奈川県立音楽堂』。
前方右手に見えるのがやはり前川が設計した1962年開館した『神奈川県立青少年センター』
『神奈川県立青少年センター』と同じ通りに前川が設計した『神奈川婦人会館』もあり、横浜市紅葉ヶ丘は前川建築の宝庫です。
東京文化会館
上野公園内にある東京都立のホール。大ホール、小ホールの他、リハーサル室、会議室、レストラン、音楽資料室を設備として設けている。1961年に日本建築学会賞作品賞 及び 第3回BCS賞を受賞した。2003年にDOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築に選ばれている。前川建築の代表作のひとつです。
ル・コルビジェの近代建築の様式『ピロティ』
ル・コルビジェの建物の建築様式のひとつとも言われる『ピロティ』を採用しています。ル・コルビジェは床、柱、階段を建物の骨組みとする建築手法を考案し、それまでのトラディショナルな石積みやレンガ積みの組積の建築からの転換を図りました。
柱で支えられた吹き抜け空間『ピロティ』もそのスタイルのひとつ。前川はル・コルビュジエ、アントニン・レーモンドの元で学び、モダニズム建築をいち早く建物に反映させました。
昼間と比較して夜間ライトアップされると更に建物のボリューム感も感じられます。
柱の先端は細くなっている様子もよくわかります。
上野公園全体からの外構計画
大地からせりあがってくる様なイメージを創造させる外構の計画。
植栽や高木回りにも建物の演出を効果的に表しています。
側面から見ると細い柱が全体を支えているようにも見えます。
リーフレットPDFデータ
https://www.t-bunka.jp/pdf/gallery/Ja_En_guide.pdf
下記サイトでオリジナル商品を販売しています。
よろしくお願いいたします。