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アイノ・アルヴァ 2人の創造する世界

緊急事態宣言で多くの美術館は事前予約制になっています。

予約チケットが完売した世田谷美術館の企画展『アイノとアルヴァ 二人のアアルト』を観てきました。本日が最終日の今回の展示はアアルト夫婦のユニットならではの魅力的な展示でした。

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『アイノ・アルヴァ 2人のアアルト展』2021年3月20(土祝)~6月20日(日)

 

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会場入り口前のアアルトの家具、照明などを配置した空間展示

Artek - Contemporary Living with Aalto – アアルトデザインと暮らす-

 

以前東京ステーションギャラリーで開催された『アアルト展』は『アルヴァ・アアルト』の建築家としての仕事を大きくクローズアップ。

アアルト作品を撮影した美しい写真を中心にその建築物を中心にみせる展示でした。

今回の展示はパートナーのアイノの仕事にも注目し、アアルト夫妻が建築とデザインの本質を探究し、お互いを尊敬し、高めあい作品を創り続けたその世界観を感じる展覧会でした。

 

今回の展覧会の私的ポイントを考えるとおおきく4つ

・公共の重要性を問う建築やデザイン

・すべての人が手にする美しく機能的且つリーズナブルな製品

・アアルト夫妻のヒューマニズム

・平面図に合わせた空間展示

 

4つの項目に共通するのは一般生活者が豊かに暮らしための健やかな建物や工業製品。

アイノとアルヴァ 二人のアアルト | 世田谷美術館 SETAGAYA ART MUSEUM

 

フィンランドの国民的な建築&デザインユニット

年間を通して暖かい日照時間の少ない北欧の四季。日常の生活やプライベートな時間の大切さ、そして福祉、公共性などを大切にする国民性と自然を敬愛する国がフィンランド。

そんなフィンランドのデザインや建築を世の中に提供し続けたのがアイノとアルヴァ。ふたりのアアルト。

仕事とプライベートのパートナーでもあり、彼らふたりだからこそ実現できた時代を超え、生き続ける建築とデザインがそこにありました。

写真では紹介できませんが、アアルトの初期のインテリアはコンパクトで実用的。前半の空間展示は掲載された平面図と同じ寸法によるスペースと実際の家具の配置。

シンプルで最小限の空間に手に届く生活の豊かさと美しさが感じられました。

 

後半の展示は撮影などができましたが、ここでは自作として製品化された家具、照明、フラワーベースなどを使った完成された空間がいくつも展示されています。

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写真は『L- レッグ』の椅子の脚を応用したⅩ600スツールのテーブル版

4本の脚を接合接着して完成したテーブル。テーブルの上には『サヴォイ・ベース』

 

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決して豪華ではないが豊かな暮らしを約束するインテリアデザイン

ペンダント照明は A331 ペンダントランプ 『ビーハイヴ』

左手側:アームチェア 400 タンク『ゼブラ』

 

www.setagayaartmuseum.or.jp

 

 

日常の暮らしの中の建築とデザイン

日常生活の中での『暮らしを大切にする』と言う考え方のもと作られるものそれがアアルトの建築とデザイン。

使いやすい心地よく機能的な空間、そこに置かれるさまざまな家具や食器たち。

誰が見てもひと目で親しみが沸き、すべての人々が身近に手に取って使えるものばかり。

特定な人々が手にすることが出来る非日常的な高価なものではなく、本来のおおくの人々が感じる生活に寄り添うこころの豊かさには繋がるものです。

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日常の暮らしの中に生活の豊かさがある。

これは素晴らしいことだと思います。写真は42 アームチェア

 

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L-レッグの積層の曲木の製造工法はヨーロッパでの特許申請がされています。

写真は66チェアとL-レッグを使用したテーブル レイジー・スーザン

 

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*参考写真:東京ステーションギャラリーの『アアルト展』の会場外に展示された『L-レッグ』

上記の写真下のように無垢のバーチ材の脚部上部に切り込みを入れて、薄い板を挟み加圧するという特殊な曲木の加工技術で成形。写真の上には曲げられた椅子の脚の一部が映っている。

アアルトと工場技術者が試行錯誤して確立し、さまざまなアアルト家具に採用された技術。

 

 

ヒューマニズムの大切さ

彼らの設計した建物『パイミオのサナトリウム』この建物の病室の空間や設備の細かい配慮。展示の中にもあった洗面器の消音設計や清掃などのメンテナンスに配慮した壁構造や枕元に強い日差しが当たらないような窓と壁の位置の工夫などこの当時を考えるとまさに時代の先端を行く建物設計の考え方ですね。パイミオのサナトリウムのためにデザインされたアームチェア 4『パイミオ』は、結核患者の肺に負担を掛けない形状による成形合板を使った斬新な座面で20世紀の名作家具と言われています。

Artek - 41 アームチェア パイミオ

 

またアイノは社会貢献の強い想いがあり、児童福祉の観点から幼稚園、保育園、保健医療施設の為のインテリア空間や家具などにも取り組んでします。

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アイノがデザインした通称『子どもの家』の使わないときは足元側を上にあげて閉じる幼児用ベッド

縦方向に閉じることで狭いスペースに置くことも可能。

 

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ハンモックのように使わないときは上下に閉じて収納できるベビーベッド
布の部分は完全に外すことができる。

 

 

自然からのインスピレーション

アノイは工業製品の場面でも多くのデザインを残しています。イッタラ社の‘Bölgeblick’

『ボルゲブリック』シリーズは発売から80年あまり経過した会社が扱う最も古いガラス製品です。

今でもとても人気があり、わたしもゴブレットを使っています。持ちやすく舌触りもよく波紋の美しさはテーブルへのグラスなどの影の映りこみで確認できます。

 

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重ね合わせスタッキングすると美しいガラス器『アーロン・クッカ』

 

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有名なフラワーベース『サヴォイ・ベース』

 

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『サヴォイ・ベース』は木型に溶けたガラスを吹き付け成型。吹きガラスのよる制作。

 

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水の波紋をイメージさせるガラスのピッチャー、ゴブレット、皿など『ボルゲブリック』のシリーズ

スウェーデン語で水面に石を投げ入れたときにできる円状の波という意味でアイノはこの瞬間をグラスの表面に表現したいと考えていました。

このようなモダニズム建築を超えた人間愛と自然を愛するアアルト夫妻のパートナーシップ、協働による時間の濃密さを感じる展覧会でした。
『特別な豪華さや贅沢なものは必要ない』というようなメッセージが伝わりました。

 

 

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最後にニューヨークの万国博覧会のフィンランド館の展示を意識した空間展示。

うねる木材のルーバー壁がなんと斬新なこと。これが1939年に実現したことに驚きました。

 

今回は非常に展覧会図録が充実していました。会場では定番の家具『スツール60』が良く売れていましたね。その他布地の製品はよく売れていたようです。

https://blog.hatena.ne.jp/ceramicsstar/ceramicsstar.hatenablog.com/edit?entry=26006613585960905

 

 

下記サイトでオリジナル商品を販売しています。
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minne.com