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細く長い人 『アルベルト・ジャコメッティ』

2022年印象に残った展覧会のことを写真とともに紹介します。

今回はイタリアの彫刻家『アルベルト・ジャコメッティ』

わたしの好きな彫刻家です。

 

彫刻家『アルベルト・ジャコメッティ』

今週の6月25日(日)まで『エスパス ルイ・ヴィトン 大阪』にて、フォンダシオン ルイ・ヴィトンが主催する『アルベルト・ジャコメッティ』展が開催されています。

ジャコメッティの7点の彫刻作品はフォンダシオンの所蔵コレクションです。

広々とした空間に7点の作品は独自の存在感は放ち、スタイリッシュ且つ重厚な展示会でした。

まず入口を飾るパネルには建築家『フランク・ゲーリー』の言葉

"私は夢を描いています。フランスを深遠な文化的な使命感を象徴するような壮大な帆船をパリのために設計する夢を"

まず最初に目に入るのが約3mの高さがある立像『大きな女性立像Ⅱ』

ジャコメッティの作品は比較的大きなものはいままで見たことがなくなかなかの迫力。

**会場は写真撮影の許可を得ています**

『大きな女性立像Ⅱ』1960年中心とした会場

斜め下から見上げる

この作品と『歩く男』『頭部』の3点はニューヨークのチェース・マンハッタン銀行ビルの広場に設置予定が頓挫してしまいました。

ジャコメッティは継続し制作を進めて、1962年のヴェネツィア・ビエンナーレに出品。

彫刻部門の大賞を受賞して世に彫刻家としての存在を知らしめた作品となりました。

『大きな女性立像Ⅱ』の背中の部分

作品を注意深く見てみると、手の痕跡が見られ、実際見ると全体には細いのですが、かなりのボリュームがあり、肉付けに試行錯誤の跡が見られます。
細く長い人物像は全体でみるとそぎ落とされて、特に群像の作品は記号のようにも感じられることがあるが、この作品の印象は違っていました。

頭部から胸にかけての表情

3mの大きさに対して頭部はとても小さく、視点からの距離を感じさせ作品の高さを強調しています。

首は長くさらに顔が遠くに見える。

胴体まわりの変化

ブロンズ像から感じ取られるのは、芯棒に対して粘土を塗り固めて大きな表現と細かい表現を使い分け、手で押し付けたりナイフで削ったりしています。

制作の勢いがわかるくらいの表現

手の指やナイフを屈指して無数の大小の凹凸が見える。

細長い全体のフォルムとこの凹凸の激しさのバランスが絶妙です。

ただ人に相対する遠近の距離の差がある過ぎてやや戸惑ってしました。

横から見る

そして足が異様に大きい。台座から足の甲までが凝縮されて安定感がある。
地面に立つ足の量感が強調していて、とても強さが伝わってきます。

足に部分のディテール

両足を単純化させてひとつにまとめて台座と同化させて抽象的に見せている。
力強く安定感があり存在感も際立つ。

『フォンダシオン ルイ・ヴィトン』

今回の展示の企画をした『フォンダシオン ルイ・ヴィトン(ルイ・ヴィトン財団)』は、現代アートとアーティストのインスピレーションの源となった20世紀の作品の保存・発信に特化した芸術機関です。

その拠点となるパリの観光スポットとして現在も話題のルイ・ヴィトン財団美術館『Fondation Louis Vuitton:フォンダシオン ルイ・ヴィトン』。

カナダ系アメリカ人の建築家『フランク・ゲーリー』が設計したこの美術館は2014年10月、フランス・パリにオープンしました。

日本にはルイ・ヴィトン財団の美術館は無く、東京とここ大阪に設けられたアートスペース『エスパス ルイ・ヴィトン』の活動において、年間を通してさまざまな企画展が開催されています。

『フォンダシオン ルイ・ヴィトン』(ルイ・ヴィトン財団美術館)公式サイト

www.fondationlouisvuitton.fr

 

『エスパス ルイ・ヴィトン 大阪』の会場入口にあったパネル。

建築家『フランク・ゲーリー』の言葉

"私は夢を描いています。フランスを深遠な文化的な使命感を象徴するような壮大な帆船をパリのために設計する夢を"

建築家『フランク・ゲーリー』の言葉と美術館のラフスケッチのパネル
彫刻の中に見える『生と死』

『アルベルト・ジャコメッティ』の彫刻に見え隠れする人間の存在と死。

この初期の作品『棒に支えられた頭部』1947年は自身にとってとても近い隣人や知人の二人の死をテーマに制作している。

大きく口を開けたその頭部は『生』としてのかたちは無く、上に魂が抜けていく姿を彫刻にした様にも感じ取れますね。

『棒に支えられた頭部』1947年

生と死を共存させたような絶対的な存在が彫刻の中にあります。

『3人の歩く男たち』1948年

『3人の歩く男たち』1948年

『3人の歩く男たち』1948年をシルエットで見る

極限までに凝縮して圧縮して3人の人が歩く姿や動作を記号のように表現。

足は大きく台座にしっかりと立っているので儚く脆い姿ですがここに強く存在しています。

『男の頭部』ロタール I、ロタール II、ロタール III(1964-1965年)

『男の頭部』ロタール の彫像


晩年の彫刻モデルを務めた写真家『エリ・ロタール』の彫像。

頭は小さく胴体は大きい胸像は山の岩壁のよう。

人間が崩れていく不思議な光景。

『ヴェネツィアの女III』(1965年)

『ヴェネツィアの女III』(1965年)

『ヴェネツィアの女III』(1965年)

これら『アルベルト・ジャコメッティ』の彫刻は人間の生と死を封じ込めて凝縮、圧縮させ、あのようにシンボリックな細く長い姿 かたちになったのではないかと思いました。

建築的な会場構成

会場はグレーとオレンジで構成された会場展示は『ジャン・フランソワ・ボダン』の空間設計はシンプルで極端な展示効果は狙わず控えめなです。

『ジャコメッティのアトリエ』の中をイメージした7点の作品と対峙する側の距離感に配慮した展示でした。

その他ショーケースや展示台、写真や作家の文章や日記、別室でのドキュメンタリー映画を上映した展示構成でした。展示は今週の6月25日 日曜日迄です。お見逃しなく。

展示会場の風景

■エスパス ルイ・ヴィトン 大阪
〒542-0085
大阪市中央区心斎橋筋2-8-16
ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋 5F

『アルベルト・ジャコメッティ』展

会期:2023年2月23日(木・祝)-6月25日(日)
開館時間:12:00-20:00
休館日はルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋に準じます。
入場無料

 

 

下記サイトでオリジナル商品を販売しています。
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